技術計算:反応器の分類
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橋本の図書1)は、工業反応装置の選定・設計・実例を紹介している。ここで反応器の分類を行っており、詳細はそちらを参照されたい。
ここでは、今までプロセス・エンジニアとして経験し携わってきた数多くの反応器の設計、解析、シミュレーションに係わる知見を、反応器の様式分類の観点から述べる。
- 1. 反応装置内の混合と拡散
- 7. 特殊な混合モデル
- 8. 過去の解析事例
- 9. Literature Cited
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反応器の分類
化学工学の一つの分野である反応工学という面から、すなわち何らかの化学反応を、工業規模の、装置内で起こさせ、製品となる化学物質を製造するという 装置設計を念頭に入れて、反応器の分類を行う必要がある。この分類に従って、使用する原料の化学種が異なっていても、反応器設計という面から共通点を拾い出し、 設計手法としてまとめることは、有意義で価値のあることである。
ここでは、工業製造装置としての反応器を分類する方法が、いろいろ提案されている。その一例を以下に示す。
- 反応が起きている相による分類:
気相、液相、固相 - 触媒の有無による分類:
触媒反応器、無触媒反応 - 相の数:
均一系反応、不均一系反応 - 反応器形状による分類:
管型、槽型、塔型、固定層、移動層、流動層
また化学反応を有利に進めるために、触媒を用いることが多い。触媒の形状として主に固体のペレット状、粉末、液など様々な形状がある。触媒の相(固相)も相の数に入れて、 以下分類する。触媒以外に気液接触を促進するため固体充填物を使うことがあり、これら反応に直接関与しないが、気液間の物質移動を促進するための固体も、装置形式を 分類する上で考慮し、分類した。
反応器様式による分類
下表の横軸には反応様式(反応が起きている相)を分類しています。縦軸は反応装置の形式を分類しています。●をクリックすると、該当プロセスの実績例にリンクしています。
気相 | 液相 | 気-固 | 液-固 | 気-液 | 気-液-固 | |
---|---|---|---|---|---|---|
固定層 | - | - | ● | ● | - | ● |
移動層 | - | - | - | |||
流動層 | - | - | ● | ● | - | ● |
撹拌槽 | - | ● | - | ● | ● | ● |
気泡塔 | - | - | - | - | ● | ● |
(多)管型 | ● | ● | ● | |||
塔型 | - | ● | - | ● | ||
特殊型 | ● | ● | ● | ● |
この表で、固相とは、固体触媒や固体充填物を意味します。また生成物が不溶性の固体となるときも固相に分類しています。表中の ● は、経験したことのある実績のある反応器を示しています。また、'-' は現実にありえない反応形式を示しています。たとえば、気相で固定層の反応器は、固定層(触媒や充填物)といった固相が含まれ、気-固の二相反応に分類されます。
ここでいう撹拌槽型とは完全混合型の意味であり、機械的撹拌や外部循環撹拌を含む。また(多)管型と塔型の区別は厳密に行っていないが、外形から判断している。
固定層型反応器
固定層型反応器では、流体の流れが軸方向である"axial"型と、半径方向である"radial"型に大別される。 反応による吸発熱を伴い、非等温操作となる。固定層ベッドを分割し、除加熱装置を通すこともある。 固相は主に固体触媒ペレットが充填される。固定層型反応器は気固反応、気液固三相反応が多く、極めて稀に液固反応 がある。
気-固
工業的プロセスの例:アンモニア合成、ナフサ水蒸気改質、プロピレン直接酸化
検討実績:
液-固
工業的プロセスの例:イオン交換反応、エステル化反応
検討実績:酢酸エチルのエステル化(パイロット装置)
気-液-固
工業的プロセスの例:水素化脱硫反応、トリクルベッド反応器
検討実績:トリクルベッドの反応器シミュレーション実施
酢酸エチルのエステル化(反応蒸留との組み合わせ)
移動層型反応器
固体粒子が通常気体と向流、並流または十文字流となって接触し、重力により移動しながら反応を進行させる。
気相
液相
気-固
工業的プロセスの例:セメント製造、ロータリーキルン反応器
液-固
気-液
気-液-固
流動層型反応器
気-固
工業的プロセスの例:アクリロニトリル合成(ソハイオ法)
無水マレイン酸
流動接触分解(FCC)
気相法PE、PP
高速流動層
噴流層(spouted bed)
液-固
気-液-固
撹拌槽型反応器
円筒型反応器に撹拌翼を上部または下部から挿入し、完全混合槽を狙った反応器。撹拌軸は通常鉛直である。 ごく稀に撹拌機付反応器を90度寝かせた水平設置の反応器もある。
液相
工業的プロセスの例:ポリスチレン塊状重合、HIPS、SAN、ABS
検討実績:ポリスチレン、
液-固
工業的プロセスの例:スラリー反応器
気-液
撹拌機付きの完全混合槽に、反応原料である気体を通気することから通気撹拌槽と呼ばれる。
工業的プロセスの例:CXの空気酸化(Agitatorless)
検討実績:シクロヘキサンの空気酸化、
気-液-固
撹拌機付きの完全混合槽に、反応原料である気体を通気し、しかも固体触媒を流動させることから三相スラリー反応器と呼ばれる。
工業的プロセスの例:
検討実績:脱水素反応(縦置き型)
気泡塔型反応器
気-液
工業的プロセスの例:湿式酸化、CXの空気酸化(Agitatorless)、MEK水和
検討実績:水和反応、尿素(多段気泡塔)
気-液-固
工業的プロセスの例:HSC
(多)管型反応器
気相
検討実績:
液相
検討実績:
気-固
検討実績:
液-固
検討実績:
気-液
検討実績:
気-液-固
塔型反応器
液相
工業的プロセスの例:ポリスチレン(HIPS)、ナフサ分解炉
気-固
気-液
気-液-固
検討実績:
特殊型
気相
液相
気-固
液-固
気-液
気-液-固
参考ライブラリ
参考ライブラリ
は、ここで取り扱っています。
Literature Cited
- 引用文献
- 1) 橋本健治編著:「工業反応装置 選定・設計・実例」、培風館、東京(1984).