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技術計算:反応速度解析

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化学工学系のプロセス・エンジニアが反応器設計・解析を行うに際し、必要な基礎知識である反応器モデルとその基礎となる方程式系 (主に微分方程式、注1)を如何にして解くか、また中小規模のラボ・パイロットスケールの実験データから如何にして反応 (速度)解析を行い、速度定数を最適化するかに焦点を当て、基礎的な数値解析技術の習得を最終目的とし、 そのために必要な反応速度について基礎知識を以下紹介・解説する。

【注1】反応器モデルに現れる連続の式、運動量保存、熱保存、物質保存則で、基本的に常微分方程式(ordinary differencial equations,ODE) または偏微分方程式(partial differencial equation,PDE)を解くための数学的な基礎知識・周辺知識は、本サイトの別ページにて 記載している。これら保存則の式の導出や、反応器モデルの構築の仕方、非線型方程式系の解法についての詳細は、専門の図書や別ページを参照されたい。

【注】数式表示にはMathJaxを利用しています。IE8以下では表示が遅くなる可能性があります。FireFox などIE8以外のブラウザを利用下さい。

反応式と反応速度の基礎

化学工学で特に「反応工学」の分野で現れる、反応器モデルで微分方程式がよく利用される。典型的な物質収支式および熱収支式は、こちらに示すように表される。これら 反応器モデルの基礎式には化学反応による化学種の増減や熱の出入りの項(反応項)が含まれている。

反応速度を考察する上で、次の総括の化学反応式を考える。原料であるA、Bの原料濃度 の(m,n)次反応とした。速度定数はArrhenius式で表されるとした。 \[ \begin{align*} aA ~ + ~ bB ~ & \overset{k}{\longrightarrow} ~ cC ~ + ~ dD \tag{1} \\ r & = kC_A^mC_B^n \tag{2} \\ k & =k_0 \exp \biggl( -\frac{E}{RT} \biggr) \tag{3} \\ \end{align*} \]

成分Aの化学量論数を一般に \( \alpha_A \) とする。原系(原料系)のとき負、生成系のとき正の値をとるものとする。 また(1)式の反応の単位反応容積当たりの反応量を \( r \ \) [kmol/s/m3]とすると、原料の成分Aの反応速度 \( r_A \) ( \( r \ \)は正、\( \alpha_A \) は負。 \( r_A \) は消失するとき負の値となる)は、 \[ \begin{align*} & r_A = \alpha _A r \tag{4} \end{align*} \]

で表される。なお、反応速度 \( r \ \) の単位系で単位反応容積基準の速度と想定したが、触媒重量当たり、ベッド容積当たりなど基準量は個々ケースにより違い、反応速度の定義を明確にしておく必要がある。

(2)式の反応速度式や(3)式の反応速度定数は、濃度および温度に関して非線型となっており、これらを含む反応器モデル を構成する方程式は非線型となる。簡単な仮定を置かない限り、これら基礎式は線形方程式とならず、代数的に解くことはできない。

反応の分類

前節ではもっとも単純な一反応のみの速度定数を示したが、工業的な反応器では通常複数の反応が同時に、並列的に、逐次的に、または相を移動して 起こっている。工業的な反応器の反応形式を分類するとき、次のように反応が起きている相による分類方法がある。複数の相を移動し物質移動を伴う場合には 実際の反応が起きている相に着目しなければならない。また超臨界反応など分類し難い場合もある。

反応の起こっている相による分類

気相反応では、素反応に分解して解析することが行われている。特に自動車エンジンルーム内での 燃焼反応解析では、ラジカル種を考慮した数十から数千個の素反応に分けて解析が行われている。ラジカルが関与するときの素反応の速度 定数は、次式を用いることが多い。

これらラジカル反応は速い反応や遅い反応が混在しており、これら連立して解くためには、たとえばGear法を使うなど特別な工夫がなされる。

一方、液相反応で素反応にまで分解して解析を行うことは現実的に困難で、総括の反応式として解析されている場合が多い。

また触媒を用いた気相反応では、気相成分が触媒表面に吸着し、触媒表面上で反応する不均一系反応を取り扱うこともある。 このときには表面吸着を考慮した反応速度式、たとえばLangmuir-Hinshelwood型の速度式を導入する必要がある。

不均一触媒の有無による分類

反応器内で考慮すべき反応がひとつの単一反応のとき、複数の反応が起こる複合反応に分類する方法もある。 複合反応には逐次反応、並列反応、正方向に進む反応と逆反応との2つが同時に起きる平衡反応が含まれる。

反応の数による分類

最適化問題

反応速度定数のパラメータである、頻度因子と活性化エネルギーを、実験データから最小二乗して最適化する ことを考える。

最適化の数学的手法については別ページを参照されたい。

演習問題

演習問題1:反応速度定数の定式化(実験データ解析)

純度100%のスチレン(Mw:104.14 kg/kmol、Styrene、以下STと略す)を、無触媒・熱開始重合反応を利用し封管重合を行い、それぞれの時刻でサンプリングし、ポリスチレン(Polystyrene、以下PSと略す)の生成量を転化率(Conversion、仕込み原料の重量のうちPSに反応した重量の割合)として分析・測定した。実験温度は表A-1に示す3水準の等温下で行なった。反応次数nを1次とし、速度定数kがArrhenius式で表せるとし、頻度因子k0および活性化エネルギーEを求めよ。ただしR=8.314 kJ/mol/Kとする。

表:スチレンの封緘重合実験結果
120 degC 140 degC 160 degC
Time[hr] Conv[-] Time[hr] Conv[-] Time[hr] Conv[-]
0 0 0 0 0 0
2 0.15 1 0.23 0.5 0.31
4 0.29 2 0.4 1 0.53
6 0.4 3 0.55 1.5 0.67
8 0.5 4 0.65 2 0.78
10 0.56 5 0.73 2.5 0.85
12 0.64 6 0.79 3 0.89

【ヒント】

-STのモル濃度をCST[kmol-ST/m3]とすると、n次の反応速度r [kmol/h/m3]およびArrhenius式は、次式で表わされる。 \[ \begin{align*} r & = k C_{\rm ST}^n \tag{A.1} \\ k & = k_0 \exp \biggl( - \frac E{RT} \biggr) \tag{A.2} \end{align*} \]

-封管内は均一組成とみなす(完全混合)

-封管重合は、“完全混合槽型反応器”の流入・流出のないバッチ反応器に相当する。

基礎式は、テキスト(4.6)式および1次反応の仮定から、次の1階の常微分方程式となる。 \[ \begin{align*} \frac{dC_{\rm ST}}{dt} = -r = -kC_{\rm ST} \tag{A.3} \end{align*} \]

時刻t=0で、CST=C0の初期条件で解くと、次式が得られる(以下、添字STを省略)。 \[ \begin{align*} \ln \biggl( \frac{C}{C_0} = -kt \tag{A.4} \end{align*} \]

この式は、時刻ゼロでC0の濃度であったSTが、時刻tで濃度Cとなることを表している。

-ある時刻の転化率をx とし、これを初期濃度C0および時刻tでの濃度Cを使って表すと、 \[ \begin{align*} x = \frac{C_0-C}{C_0} = 1 - \frac {C}{C_0} \tag{A.5} \end{align*} \]

となる。これら式から \[ \begin{align*} \ln(1-x)=-kt \tag{A.6} \end{align*} \]

が得られ、1-xをtに対して片対数プロットを採るとほぼ直線が得られ、これを最小二乗する。この勾配は反応速度定数kとなり、温度毎にkを求め、Arrheniusプロットする。

【手順】

① 表A-1を、MS-Excelシートに転記する。
② ある温度の時間-転化率のデータから、(1-x)とtとで片対数プロットを作成する。
(上のヒントから、直線が得られるはず)
③ プロットからその勾配kを求める。(またはln(1-x)/tが一定となるはず。演習では手間を省くため、算術平均値を求め、これを以下の計算に用いる。)
④ 温度レベル3点の速度定数k をArrheniusプロット(lnkと1/T)し、切片と勾配をMS-Excelのアドインの分析ツールで求める。

アドインを設定するには、MS-Excelの「ツール」-「アドイン」で、「分析ツール」をチェックし戻る。

設定したアドインを利用するには、「ツール」-「分析ツール」-「回帰分析」をクリックする。以下ダイアログにしたがって入力を行い、最小2乗の結果を演習1のシート上の適当な場所を指定し、出力する。

演習問題

は、ここで取り扱っています。

Literature Cited

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